滞在型トランクルームとはトランクルームの各部屋に電源があったり、施設内に共用のトイレや手洗い、共用スペースがあるなど、一般のトランクルームにはない設備がたくさん整ったもののことで、中で趣味や工作に興じて長時間過ごすことを前提に提供されています。
一般のトランクルームが荷物の出し入れ以外の目的で長時間滞在することを禁止している一方で、滞在型トランクルームは長時間滞在してもらうことを目的としています。
トランクルームに住むことが禁止される理由や実情については、トランクルームに住みたい人とは?法的制約と現実のニーズが生んだ新たな潮流が参考になります。
滞在型トランクルームが求められるようになった背景
滞在型トランクルームが求められるようになった背景には、日本人の時間の使い方の多様性がその一因として挙げられます。
昨今、一人だけで過ごせる空間が求められる一方でそれを満たせるサービスがまだ十分でない実情があり、趣味部屋や隠れ場といったワードに共感を持つ人が増えています。
アパートをもう一部屋借りたり別荘を買うほどではなく、独りで趣味に没頭できる時間を求める人が増えた結果、トランクルームを一時滞在型の空間として貸し出すサービスが現れるようになったのです。
一時滞在型のトランクルームは一般的に「滞在型」と呼ばれることが多く、宿泊することは禁止されていますがトイレや電源が付いているため極めて普通の生活空間に近い環境を再現できます。
また、24時間で入りできるほか、常識的に問題になるような行為をしないかぎり特に大きな制限は設けられていないのが特徴です。
滞在型トランクルームの代表例を紹介
滞在型トランクルームが登場した背景は上記の通りですが、とはいってもその数はまだまだ少ないのが現状で、2024年時点でまだ下記の3社しか滞在型のサービスを提供していません。
- U-SPACE[+U]
- オレンジコンテナ
- イナバボックス
U-SPACE[+U] 電源付き・トイレ共用
U-SPACE[+U]は一般のトランクルームのレンタル事業を行っているU-SPACEが新たにリリースした趣味部屋・隠れ家をコンセプトとした滞在型トランクルームです。U-SPACE[+U]には下記の設備が用意されています。
- 電源
- トイレ
- 共用スペース
電源付きの部屋が個別に用意されている他、共用トイレと手洗い、共用スペースで作業することもできます。
同様の店舗は2024年時点で国内に計6店舗しかありませんか、今後増えていくと予想されます。
下記はU-SPACE[+U]の店舗一覧です。
- 宇都宮中今泉店(栃木県)
- 水戸赤塚店(茨城県)
- 柏大室店(千葉県)
- 茶屋ヶ坂駅前店(愛知県)
- 垂水海岸通店(兵庫県)
- 福岡半道橋店(福岡県)
オレンジコンテナ 電源付きのバイクコンテナ
オレンジコンテナは全国展開型のトランクルームとして非常に有名ですが、主にバイクコンテナを中心に電源付きコンテナ(100V)を増やしていく方針とのことです。
2024年時点、電源付きコンテナは下記6店舗だけですが、工具や掃除機の充電に使用されることを想定しており、コンテナ内に滞在して作業することを前提したコンセプトとなっています。
U-SPACE[U+]のようにくつろげる快適空間を目指したものではないですが、電源があることで着手可能な作業の範囲は大幅にアップします。バイクメンテナンスもOKとのことなので、工作機械を置いても問題ないかと思われます。
イナバボックス EVガレージ・OREGA
EVガレージは1~11畳まで幅広いラインナップで、バイクはもちろん車の収納も可能です。EV自動車の充電をするのはもちろん、バイクのメンテナンスに使う工具を使用するための電源としても利用できます。
これはイナバクリエイトが運営する「隠れ家」をコンセプトとしたスペースで名前はOREGA。
登記利用できる物件もあるとのことで、ここまでくるとトランクルームというよりもレンタルオフィスです。
OREGAは自由に使えることをトコトン追求しており、利用方法はカスタムオーダーメイドと賃貸の2種類利用されています。
滞在型トランクルームと一般のトランクルームの違い
ところで、滞在型トランクルームと一般のトランクルームの違いは何かと言うと、それは電源の有無やトイレの有無、どういった使われ方を想定しているかといった事業者側のコンセプトの内容となります。
一般的なトランクルームの事業者は利用者が荷物を出し入れする以外の目的でトランクルームを出入りすることを想定していません。
そのため、屋内型であれば施設内の蛍光灯やLEDで明かりを灯す他に各部屋に蛍光灯などは設置されていません。また、電源も一切ありません。
屋外型については換気口があったりしますが、なにもないのが普通です。つまり屋外型コンテナはただの箱です。
ところが滞在型と呼ばれるトランクルームは最低でも電源が設置されているので、電気を必要とするものはたいてい利用できますし、バッテリーが切れれば充電することもできます。
当然、バッテリーの充電が切れるほどの一定時間滞在することも前提にしています。
「滞在型」という名称の由来については厳密には誰が付けたのか分かっておらず、そもそも滞在できるトランクルームを探している人が多かったことで、利用者の側から生まれた自然発生的な名称である可能性が高いです。
事実、電源付きのトランクルームを扱っているトランクルーム各社はいずれも自社のサービスを滞在型と名付けたりしていません。
遠まわしな言い方をすれば、荷物の出し入れ以外の目的で長時間滞在するのもOKだといったニュアンスが正解で、宿泊目的でなければ大丈夫といったところでしょう。
滞在型トランクルームと貸しガレージとの違い
U-SPACE[+U]のように電源付きの部屋やトイレがあったりすると、ともすればワーキングスペースや貸しガレージなどのように起業目的で作業する人の作業空間と捉えられそうですが、実際のところどうなのでしょうか?
滞在型トランクルームと貸しガレージは下手すると貸しガレージのほうが利便性で低くなりそうですが、実際は貸しガレージを拠点として事業を起こして成功している事例は多々あります。
日本では堀之内久一郎氏が名古屋の貸しガレージでリサイクルショップを始めて大企業(生活倉庫)の社長にまでなった事例がありますし、個人的には近所の貸しガレージで商売をしている古物商を見かけたこともあります。
店舗として利用できるか?
結論から言いますと、滞在型トランクルームは店舗として利用することはできません。そもそも契約者以外の出入りは禁止です。ただし、24時間365日利用可能であることから、仕事の作業場として勝手に使っても誰も文句は言えないと思います。
何より、画像からもわかるようにエアコンの設置も可能なので、夏場でも長時間滞在することが可能です。
注意:電気代は請求されます。
つまり、仕事の作業場として利用できる点については滞在型トランクルームも貸しガレージも大きく変わらないと言えそうです。
住民票を置いたり登記できるか?
それでは住民票を置いて住居とすることは可能かというと、貸しガレージは実際に住んでいる事例が山ほどありますが、住民表の住所として登録できるか否については自治体の判断によるところが大きいとのことです。
”住民基本台帳法第5条”の解釈ではただ住んでいるだけで貸しガレージの住所を住民票の住所に登録できないことを明記していますが、実際の判断は各自治体で柔軟に対応しているのが現状のようです。
一方で滞在型トランクルームに住民票おけるかどうかについてですが、答えは不可能です。
民法22条の解釈ではトランクルームは人が住むことを禁止しているので、そこを住民票の住所に登録できないとしています。
つまり、住民票を置けるかどうかについては滞在型トランクルームも貸しガレージも両方禁止されていますが、トランクルームは絶対に駄目なのが明らかですが、貸しガレージのほうは自治体の裁量で許可されるケースもある点ややグレーと言えます。
滞在型トランクルームの料金相場
滞在型トランクルームの料金相場については、まだ相場と言えるほど市場が大きくないためはっきりしたことは明言できません。
そこで、現在店舗展開している下記3社について該当物件の料金プランを一部紹介します。
- U-SPACE[+U]
- オレンジコンテナ
- ライゼボックス
U-SPACE[+U]の料金プラン
プラン | 月額賃料 | 広さ |
電源付きルーム | 17,100円 | 幅2.2m×奥行き1.1m×高さ2.1m |
隠れ家ルーム | 18,800円 | 幅1.6m×奥行き1.9m×高さ2.1m |
共用スペース | 月額賃料+1,000円 |
11畳 |
*水戸赤塚店の例
オレンジコンテナ 電源付きコンテナの料金プラン
プラン | 月額賃料 | 広さ |
電源付 2畳バイク (スロープ付) |
12,100円 | 145×230×230 |
電源付 2.6畳 | 14,850円 | 190×230×230 |
電源付2.6畳バイク (スロープ付) |
14,850円 | 190×230×230 |
*水戸赤塚店の例
イナバボックス EVガレージの料金プラン
プラン | 月額賃料 | 広さ |
1.0 畳 | 6,050 円 | 1.79 × 0.95 × 2.37 |
1.5 畳 | 8,250 円 | 1.79 × 1.37 × 2.37 |
1.8 畳 | 9,350 円 | 2.21 × 1.37 × 2.37 |
2.9 畳 | 13,750 円 | 2.63 × 1.79 × 2.37 |
2.4 畳 | 16,500 円 | 1.53 × 2.63 × 2.38 |
3.3 畳 | 20,900 円 | 1.79 × 3.05 × 2.38 |
4.1 畳 | 24,200 円 | 2.21 × 3.05 × 2.38 |
4.9 畳 | 26,400 円 | 2.63 × 3.05 × 2.38 |
11.1 畳 手動シャッター |
49,500 円 | 3.13 × 5.77 × 2.66 |
11.1 畳 電動シャッター |
52,800 円 | 3.13 × 5.77 × 2.66 |
*イナバボックス石丸3丁目店の例
まとめ
以上、滞在型トランクルームが求められるようになった背景や国内で店舗展開している滞在型トランクルームについて設備や料金プランについて紹介するとともに、滞在型トランクルームと一般のトランクルームや貸しガレージとの違いや共通点について解説しました。
令和のレンタルスペース事業はレンタルオフィスやシェアオフィス、またはコワーキングスペースといった起業を目的とする人達をターゲットとしたサービスばかが注目されがちですが、スペース利用は何も仕事のためだけに求められているわけではありません。
かつて漫画喫茶やインタネットカフェといった場所で余暇を過ごせるサービスが流行りましたが、これからは人の心の内面に向けたサービス、つまり心の充実に焦点を当てたサービスがドンドン形を変えて出てくることが予想されます。
滞在型トランクルームはその先駆け的な存在で、今後さらに進化していくものと考えられます。
人間の欲望や願望に対するあくなき追及は、やがて考えてもみなかった面白いサービスとして世に出しており、この原理は今も昔も全く変わりません。
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